たくさん感じることが人生をすばらしくするのか?

人間の目がもっと多くの
色彩を見ることができ、
人間の鼻孔がもっと多くの
芳香を嗅ぐことができれば、

人間はもっと幸福になれるし、
もっと高尚な詩をつくれる
と想いこんでいるが、

このような考えは、
黒の燕尾服でななく
華麗な衣装に身をつつめば
人生はもっとすばらしいものになる
と信じる人たちのおめでたい考えに
哲学ふうの外装をまとわせたにすぎない。

吉川一義 編訳 「『失われた時を求めて』名文選」から

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